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母の格言

2016/06/30
日記

実家の母から電話がきた。

わたしは北海道が好きで、北海道の友達が好きだ。
だから、地元を離れると決めたときは「絶対北海道から出ないと思ってた、だって北海道大好きじゃん」と友達に驚かれた。
わたしもほんとうにそう思う。
でも、どうしても彼氏との遠距離が寂しくて、ずっと憧れていた自由な一人暮らしがしたかった。
親を説得するだけの筋の通った理屈も戦う度胸もなく、半ば無理矢理実家を出た。
ほんとうに金のかかるダメ娘極まりない。

わたしの母は、わたしなんて比べものにならないくらい底ぬけに明るくて心が強くて何より厳しい。
食事のマナーも、挨拶も、他人との接し方も、家事スキルも、ものすごく厳しく躾けられた。
実家にいた頃は鬱陶しいと思っていたけれど、社会に出て一人暮らしを始めて(わたしはちゃんとした育てられ方をしたんだなあ)と実感することが多い。
もともと怠惰な性格なだけに、放任主義で育てられたら大変なことになってたよ。

「他人にされてい嫌なことは絶対するな」
「ひとりで生きていけるだけの常識は身につけろ」
「物事には筋を通せ」
25年間、耳にタコができるぐらい母から言われた。

ものすごく厳しい母だったけれど、わたしが中学生のとき学校も先生もクラスメイトも嫌で登校拒否を申し出た際は「たまにはいいんじゃな〜い?」と朗らかに了承した。
担任の先生には「ウチの娘、登校拒否させまぁ〜す!」と電話もしたし、学校に行かず引きこもってたわたしには「ちょっと洗濯しといて!頼むわ!」「TSUTAYAでなんか借りてきて観ようよ!」と、とても登校拒否をしてる娘にかける言葉とは思えないユルい扱いをしてきた。
あまりにもあっけらかんとしたいた母の態度に拍子抜けして、登校拒否って想像してたよりも大したことないな〜と段々と飽きてきてわたしの初めての登校拒否は1週間で幕を閉じた。

大人になってから「わたしが登校拒否したときどう思った?」と聞いたら、「どうも思わなかったよ、だってつらいことから逃げても許されるうちは好きなときに逃げた方がいい、大人になったらつらいことから逃げられる機会は減るからね」と返された。
わたしの母はたまに妙に格言めいたことを平気で言う。

母との電話で、一人暮らしが楽しいこと、仕事自体は向いていると思うこと、人間関係がつらいこと、会社の仕組みが肌に合わないこと、ひたすらしゃべった。
「楽しいことだけ一生懸命頑張りな、それ以外のつらいことや嫌なことなんてテキトーでいいんだよ」
また妙に格言めいたことを平気で言われた。

涙がこぼれそうになるのを必死で耐えて「そうだよね〜」と明るく答えた。
察しのいい母のことだから、わたしが泣きそうになっているのに気づいてたんだろうな。