シューイチ『食べヨムツアー第6弾』で、アルコ&ピース平子さんに著書『今日もふたり、スキップで~結婚って ‶なんかいい″』をご紹介頂きました!

本は安いのか、高いのか

日記

本の値段って、だいたい1200円~1500円+税。
それって安い? それとも高い?
まあ購入する人の経済状況だったり、本のおもしろさだったりで、感じ方はそれぞれ違うと思う。
学生時代なんかは死ぬほどお金がなかったから(ウッ…1500円…高いな…)と感じてなかなか買えなかったんだけど、実際自分が書籍を出させてもらうという経験をしてからは(えー?!1500円?!やっす!!!)と、価値観がガラリと変わった。
それほど、本を一冊書き上げるというのは、非常にたいへんで心身ともにすり減る作業なわけです。
これまで3冊の本を出させてもらってるんだけど、毎回こう思う。
「もう二度と文章なんて書くか!!!!!!!!!!!!!」と。
まあ、これはただの疲れたアピールなので、これからも文章は書きますけれど。
だって書くの楽しいし…読んでもらえたらうれしいし…みんなのことが大好きだし…。
でも、こんなに大変だなんて、書くまで知らなかった。たぶん読んでる人も知らない人が多いと思う。
どういった流れで、どれほどの時間がかかって、どういう風に本が出来上がっていくか。
というわけで、他の人はどうやっているのかは知らないけれど、あくまでもわたしの場合の本が出来上がるまでの過程について書いておく。

▼ネタ出し
11月22日に発売した『今日もふたり、スキップで』は結婚生活にまつわるエッセイなので、まずはネタ出しをする。
引き出しが少ないうえに浅いことで有名なわたしは、いつだって何を書いたらいいかわからない。
だから、担当編集さんと電話で相談する。
とってもやさしい菩薩のような担当さんが「最近どんなことがありましたか?」と聞いてくれるので、とりあえず何がエッセイの題材になるかを考えずに、ひたすら近況をしゃべりまくる。
毎日の生活のありきたりなこと、仕事で腹が立ったこと、友達と会ってこんなことをしたなど、片っ端から。
すると担当さんは「そのときどう思ったんですか?」「なんでそんな風な感情になったんですか?」と掘り下げてくれるので、答える。
それを1~2時間繰り返すと自分の頭と感情が整理されるので、「これについて書くか」となる。

▼プロット
書く題材が決まったら、プロットをつくる。
Wordをつかって、言いたいこと、感じたこと、わかってほしいことをひたすら箇条書きする。だいたい2000~3000字くらい。
怒りのパワーがすごいとだいたい3時間程度で書けるが、丸一日ウンウン唸っても書けないときがある。
ちなみにこの時点で構成は考えない。
ほんとうに雑多に書くだけ。まるでメモ書き。
完成したら担当さんに送って、OKが出たら初稿に移り、指摘等がきたらプロットの練り直しをする。
練り直してもどーーーーにもならん場合は、ボツになる。
だって書けないものは書けないから。

▼初稿
完成してOKが出たプロットをもとに、初稿を書く。
何度もプロットを読み返し、書き始める前に構成を考える。
構成を考えずに書き始めると、途中で齟齬が生じたり違和感を感じたりして行き詰ったときに、取返しのつかない事態に陥って全て消して最初から書き直す羽目になるので…。
これはわたしの癖なんだと思うけど、まずはオチを決める。
オチを決めて、そこに至るまでのプロセスを順番に書いていく。
そのせいか、最初が情報過多になったり、力尽きて尻すぼみになったりして、あとからがっつり修正しなくてはいけないんだけど…でもこれ以外の書き方ができない…。
プロットがきちんできていたら、初稿はわりと楽。
逆にプロットがざっくりし過ぎていると、初稿が苦しくて過去の自分を恨むことになる。
初稿にかかる時間は、平均して5~6時間。たぶんとても遅筆だと思う。
これも、怒りがすごければ3時間くらいで書けることもある。
進まなくて3日かかることもあるけれど、時間をおいたらスルッと書けるようになるので不思議だ。
初稿ができたら、また担当さんに送る。
ちなみにプロットが2500字~3000字でも、初稿で4000~4500字になっちゃう。

▼修正稿
担当さんから赤字が入って戻ってくる。
誤字脱字とか、文字表記についてとか、内容についてのコメントとか、諸々。
担当さんは大天使ミカエルのように慈悲深い人なので、「ここ変です」とか以外に、「ここめちゃくちゃよかったです!」とかコメントを残してくれる。
やさしい、好き。
指摘やら赤字やらを元に修正するのと、それに加えて改めて自分で読み返したときに「あれ?」と思う部分を書き直す。
ちなみに、たとえば初稿で4500字書いたとしても、修正の段階でガッツリ削って3500字くらいになることも。
回りくどい表現をするのはわたしの悪癖なので…。
この工程は2往復する。
わたしも編集さんも表現でどうしても譲れない部分があるときは、電話でのやりとりもある。
「ここは伝わりにくいです!」「わたしはこういう意図で書いたんです!」というプチバトル。
っつっても穏やかなものだけれど。
お互いにいいものをつくりたいと思ってのことなので、かなり話し合う。
ただ、対話ができる担当さんなのはありがたかった。妥協せずに突き詰めてくれたのは感謝してもしきれない。
お互い納得ができたら、一応原稿は完成。
新刊は連載12本と書き下ろし15本だったんだけど、土壇場でボツになったり差し替えになったりもしたので、ここまでの流れを31回やりました。

▼原稿データをまとめる
これは担当さんの役割なんだけど、ページ数を決め、章立てや、どういう順序で収録するかを考えてもらう。
で、ここからまた原稿を直す作業。
ある程度、この段階で直せる部分は直しておいたほうがのちのち楽になる。
この作業は1週間くらいかな。
たぶんほんとうはもっと時間をかけるんだろうけれど、発売日が決まっていたのにいかんせんわたしの原稿がそろっていなかったため、かなり急ぎの進行だった。
ひとつにまとまって、通しで読んではじめて見えてくるものもわけですよ。
で、ひたすら直す。主に内容を。
この作業が終わって、ようやく脱稿というやつです。

▼初校の赤入れ
入稿作業をしてもらい、ゲラという紙になった状態で作業をする。
赤入れというやつです。
本をほとんど差異のないもに、赤ペンでひたすら修正を入れるわけです。
勝負はここからだよ!!!!!!
あーんなに読み返したのに、修正する部分の多いこと多いこと。
不思議なもので、紙になって初めて気づくことがたくさんある。
流れで読んで、一文ずつ読んで、近くで見て、俯瞰で見て、おかしいところはないか何度も何度も確認して、何周も読み返す。
内容や表現はもちろん、「うわ~これ同じ語尾がずっと続いてるな~」とか「三点リーダーが文をまたいでるのキモイな…前の文に入れたいけど、そうなると前の部分の文字数を調整しなくちゃ…」とか「修正したことでページがずれた!どうする?!」とか、読者が読みやすいように配慮しながら、修正を重ねる。
文字数とか、数えたりもするんですよ。g
自分で判断できない部分は、米印でコメントを残して、後日担当さんと要相談。
あと表記統一。
漢数字にするかローマ数字にするかとか、漢字にするか平仮名にするかとか、どの漢字にルビをふるとか。
表記統一に関しては、データの段階からやっておけばよかったんだけど、時間がなくてこの段階でやる羽目に…。
ぜーんぶわたしが悪い!!!!!原稿が遅かったから自業自得!!!!!!
この作業は、風呂に入ることも食事をすることも忘れ、ほぼ不眠不休で泣きながら10日くらいやった。
当たり前だけど、他の人はもっと余裕を持ってやってるよ…。
一応作業が終わったら、〆切ギリッギリにPDF化して担当さんに送ります。
もうゲラは赤字でまっかっかよ。
ちなみにこの時点で、デザイナーさんや、今回装画・漫画・挿絵を担当してくれた大白さんは別進行で諸々進めてくださってます。
色見本とかも届くので、確認したりします。

▼赤字の反映
わたしが入れた赤字と、校閲さんが入れてくださった赤字と、担当さんが入れてくださった赤字の3つを照らし合わせて、すべて反映させてひとつにまとめる作業。
これは担当さんがやってくれる。
わたしが入れた赤字に対して、担当さんに「ここは直さないほうがいいです」と言われたり、わたしの見落としていた部分を担当さんが「ここも直したほうがいいのでは?」と提案してくれたり、というやりとりがある。
しかも初校の赤入れで「ここご相談したいでーす!」みたいなのを大量に入れていたので、その相談もしなくてはいけない。
わたしが地方在住ということもあり、これはLINE電話をつなげながらお互い手元にあるゲラを見ながらの作業。
朝までひたすらやりましてね…たしか10時間以上ぶっ通しで打ち合わせですよ…。
睡魔と疲労でわたしと担当さんの頭はトチ狂ってたと思う。
遠距離恋愛始まりたてのカップルかよってね。いやーご迷惑をおかけしました。
びっくりなことに、この時点でひとつひとつのタイトルも章タイトルも決まっていなかったので、この打ち合わせもした。
我ながらほんとうにギリッギリだったな!

▼再校赤入れ
再度ゲラが送られてくるので、また赤入れをする。
初校の赤入れはきちんと反映されているのかを確認して、さらに反映されたことで新たに修正箇所はないかも確認して、と。
だいたい1週間くらいかな。
初校の赤入れ同様、人間としての尊厳を失うほど実生活が疎かになっても、ひたすら何度も読むわけですよ…。
この時点でも誤字脱字はどうしてもあるんだよね、不思議なことに。
うわーーーー!あっぶねーーーーー!!!って心臓に悪いことこの上ない。
わたしが修正できる最終段階なので、神経がめちゃくちゃすり減る。
本になってしまったらもうどうしようもないしね。
で、またこれを担当さんに送って、最後の最後の確認作業。
ほんとうにこれでいいか、というのを朝まで電話で話し合う。

▼完全責了
修正校の赤入れを反映したものが、最終校として担当さんのところにあがってくる。
これはもうわたしは確認できないので、担当さんが確認してくれ、どうしても気になる箇所があれば、電話で相談。
そして、完全責了。
わたしは自由だーーーーーー!!!!!!!!
その後、見本誌ができあがり、なんやかんやあって、発売日に書店さんに並ぶ。

『今日もふたり、スキップで』はこういう過程で、多くの人たちに助けてもらいながら、出来上がりました。
書籍を出版させてもらってからは、自分が誰かの本を買うときは「やっす!!!こんな値段でいいんですか?!」と思うようになったし、献本してもらったら「大事に読まなくちゃな…」と片手間では読めなくなったわけです。
こんなに苦労してつくったんだぞ!安いだろ!だから買えよ!と言いたいわけではなくてね、自分が経験して、作品を生み出している人、そしてそれに携わっている人たちへの感謝と尊敬があふれ出て止まらないぜって話。
だから、ちゃんと正規のルートで購入して、好きな作家さんにはお金を落とそうというのが、わたしの決意です。