大和書房WEB『今日もふたり、スキップで』第9話、AM連載『命に過ぎたる愛なし』第56回が公開されました。
好ましい一日

好ましい一日

日記

昼前に目が覚める。
昨晩、先に寝た夫の寝相が珍しく悪く、小さく丸まって眠る羽目になったので、体がギシギシに固まっている。
「隅っこで丸く寝させちゃってごめんね」
「ほんとうだよ、真横になって爆睡してさ」
「いつもは逆なのにね」
「このわたしを小さく丸まらせるなんて大したもんだよ」
嫌味で褒めると、夫はうれしそうにしていた。

わたしよりずっと早く起きていた夫は、とっくに筋トレとシャワーを済ませ、ついでにお風呂掃除と食器洗いもしておいてくれたらしい。
何日か前に洗濯をして干しっぱなしにしていたボックスシーツを一緒に畳む。
「この端を持って」とか「もう少しピンと張って」といった声かけもなく、以前よりもスムーズかつ綺麗に畳めるようになってきた。
結婚生活が板についてきた証拠だと思う。

気晴らしに近所を散歩し、スーパーの買い出しもしてきてくれると言うので、その間に掃除機をかけ、YouTubeで「2週間で10キロ痩せるダンス」を見ながらハチャメチャに踊った。
夫に今さら見られて恥ずかしいものなどなにもないが、ダンスだけは少し恥ずかしい。
シャワーを浴びて汗を流し、書きかけの原稿を眺めながら夫の帰りを待つ。

帰宅した夫に「あれ? なんか顔が小さくなってない?」と聞かれたので、ダンスをして汗を流したことを伝えると「君はほんとうに簡単だよね、簡単でかわいい」と感激された。
恐らく、わたしのつくりは他の人に比べて簡単にできていると思う。
心身の不調は一晩眠ればすっかり治り、疲れ過ぎて眠れないということもなく、うんこを出すか運動をするかすれば顔は小さくなるし、酒を飲んだ次の日と泣き腫らした直後は顔の大きさが2倍になる。
生活と心と体がダイレクトにつながっている。

夫に「君も散歩してきなよ」と促され、外に出た。
1時間ほど歩き、たまたま見つけたパン屋さんでクロワッサンとスコーンを買った。
明日の朝、いいコーヒーと一緒に食べよう。
いい雰囲気の喫茶店も見つけた。
ここはいろんなことが落ち着いたら、夫と行こう。
外から店内を覗いてみると、誰もいないようだったので本屋さんに入った。
目当てのものに一直線で向かい、さっさと会計を済ませて店を出る。
本屋さんも、いろんなことが落ち着いたらのんびり行きたいね。
購入したのは、高橋ユキさん著の『つけびの村 噂が5人を殺したのか』。
晴れた日に、ベランダに座ってゆっくり読もう。

帰宅してマンションのポストを開けると、友達から手紙が届いていた。
1週間ほど前に、なんとなく勢いだけで書いて出した手紙の返事だ。
今までしょっちゅう会っていたし、なんなら近所と呼べるくらいの距離に住んでいるのにね。
手紙には「勢いがあってよかったよ」というようなことが書かれていたが、彼女の手紙もなかなかの勢いがあってよかった。
わたしたちには勢いがある、そこがいいと思っている。

今日の夜ごはんは、茄子ハンバーグ、アスパラとベーコンの炒め物、シドケの胡麻和え、刺身こんにゃく。
汁物がないけれど、いいごはんだ。
わたしはたまにいいごはんをつくる。
悪食もサイコーに好きだが、いい一日の最後にはいいごはんが相応しい。

今日は、とてもいい一日だった。
わたしはこういう一日と、そんな一日を過ごした自分を、心から好ましく思う。