大和書房WEB『今日もふたり、スキップで』第9話、AM連載『命に過ぎたる愛なし』第56回が公開されました。

選挙の日って

日記

今日は東京都知事選でしたね。
みんな選挙行った?
わたしは行ってないよ。
北海道民だから。
東京都民だったら行ってたよ。
投票行って外食してたよ、ピ~ス!

学生の頃、いろんなバイトをしていた。
コンビニ、塾講師、家庭教師、スーパーの試食販売、大学の教科書販売、書店、健康食品のコールセンター、エトセトラエトセトラ…。
短期も含めたら、数えきれないほどやったと思う。
金がなかったし、学生期間も人より長かった。

選挙関連の短期バイトは、二度経験がある。

1つ目は、投票所の出口調査。
投票の開始から終了までずっと外で立ち尽くし、投票を終えた人に声をかけ、アンケートを書いてもらい、大きな封筒に入れて集める仕事だ。
別に難しいことは何一つないのだが、雪が降りしきる真冬の北海道で長時間立ちんぼうというのは、とてもつらかった。
配属された投票所には、わたしの他にもう一人、一歳年下の女の子が配属されていた。
その子とは、同世代、同じ性別、同じ大学生ということもあり、開始前の待ち時間の段階で結構仲良くなったと思う。

大雪の中、鼻水を垂れ流し、指先を凍らせながら午前の業務を終えたあと、彼女に「一緒にお昼ごはん食べませんか?」と誘われた。
一緒に近くのファミレスへ行き、安いランチメニューとドリンクバーもセットを頼んだ。
ドリンクバーでホットココアを入れ、席に着くやいなや、彼女に「彼氏いますか?」と聞かれた。
当時、わたしは彼氏がいたので「いるよ」と答え、(ここで同じ質問をするのが礼儀なんだろうな)と思いながら「彼氏いるの?」と質問を返した。
彼女は、待ってましたと言わんばかりに「います!すっごいかっこいい彼氏なんです!」とわたしの質問に答えたあと、その彼はいかにかっこいいか、彼のどんなところが好きか、彼のイチモツがいかに大きくて立派か、彼の前戯はいかに丁寧なのか、彼とのセックスはいかに激しくて気持ちいいか、聞いてもいないのに語り始めた。
「へぇ~」「そうなんだ」「いいねぇ」「すごーい」「そんなに大きいんだ」とテキトーに相槌を打ちながら、初対面の女の子の彼氏を想像し、鉄板に乗ったソーセージにフォークを突き刺し、「パツンッ」と小さく弾ける音を聞いていた。
友達よりも、たった一度しか会わないだけのわたしのほうが、よっぽど彼氏とのセックスについて好き放題語れるのだろう。
楽しそうに話す彼女にほとんど口を挟む暇もなく、短い休憩時間が終わろうとしていた。

午後からまた、寒空の下で出口調査をする。
ファミレスで暖めたはずなのに、すぐに体の芯が冷える。
(あたたかい室内で知らん男もイチモツも話を聞くのと、寒い屋外で知らん人間にアンケートを取るの、どっちが苦行だ…?)と、ひたすら自問自答し続けている間に、午後の業務が終了した。
帰り際、「お疲れさまでした~!そうだ、連絡先教えて下さい~」と寄ってくる彼女を、「ごめん!寒くて無理!お疲れさま!わたし帰るね~!」と突っぱね、彼女とまだ見ぬイチモツから逃げ帰った。
このときの選挙結果が、どういうものだったのか全く覚えていない。
覚えているのは、寒かったことと、想像上のイチモツだけである。

2つ目は、電話での世論調査だ。
大量の電話番号が書かれた紙を与えられ、上から順にひたすら電話をかけ、「どこの政党に投票しましたか?」と聞いて、手元の紙に正の字を書いていく業務。
200人ほど雇われていたが、そこを取り仕切るセンター長になぜかわたしだけ気に入られた。
「声がよく通って素晴らしい」「あなたは電話をするために生まれてきた」「勤務時間も出勤日も全てあなたの都合に合わせるから、ぜひうちでバイトをしてほしい」と口説きに口説かれ、その後もその会社でバイトを続けることになった。
あんなにも、人から求められたのは初めてだった。
当時のわたしは、「創業以来、初めて引き抜きにあった”伝説のコールガール”」という異名で呼ばれていた。
そのときは違和感に気づかなかったが、今思えば絶対に意味が違うとわかる。
まるで男を魅了してやまない女じゃないか。
わたしはただ電話がとてつもなく上手なだけなのに。
ちなみに、学業に専念するためにバイトを辞めるときは、「薬剤師になれなかったらうちで雇ってあげる」「あなたの席はいつまでも空けておくから、戻ってきたくなったら連絡をして」と、かなり惜しまれた。

今もまだ、わたしの席はあるだろうか。
薬剤師にはなれたが、今はエッセイストとして働いている。
文章を書く仕事がなくなったら、”伝説のコールガール”として蘇ってやろうと思う。

ニュースで、今回の選挙の投票率が低いと言われていて、びっくりした。
ほんとうだろうか、わたしがTwitterを見る限りでは、投票率500000000000%くらいあると思うんだけど。
めちゃくちゃなカリスマが「みんな選挙行こうぜ!そっちのほうがマジでかっこいいから!選挙行かないとかマジでダセェから!」って言ったら、みんな行くようになるのかな、わかんないけど。
わたしは選挙があったら絶対に行くぜ、そして投票を終えたら蕎麦と天ぷら食べて、喫茶店でコーヒー飲んでから帰るんだ。ピ~ス!
やっぱり、つんく♂さんはスゲェや。